全国最高協議会③

2003.8.6SP



君よ諸葛孔明の名指揮を


     周総理が心に刻んだ孔明の言葉
       
「私は死ぬまで戦いをやめない」

勝利は団結から

 一、諸葛孔明――恩師・戸田先生が、こよなく愛した英雄であった。
 先生を囲んで「三国志」を学んだ青春の日々が本当に懐かしい。
 諸葛孔明が活躍した三国時代(3世紀)、中国では、大国の「魏」が全土を
支配する勢いであった。
 そこで孔明が考え出した有名な戦略が、「天下三分の計」である。
 曹操の「魏」、孫権の「呉」、そして孔明が仕えた劉備の「蜀」――三国が
せめぎ合う嵐の時代のなかで、孔明は、蜀の国の命運を担い、勇敢に戦い抜い
たのであった。
 きょう、ここに集った皆さんは"創価諸葛孔明"ともいうべき指導者の
方々である。
 これまでも何度か、お話ししてきたが、さらに孔明の将軍学、人材育成法、
戦いに挑む姿勢など思いつくままに、簡潔に語らせていただきたい。

断じて一人も不幸にしない!
  ◆◇常勝の将軍学 
       リーダーが模範になれ
       人の意見に耳を傾けよ

■知恵を集めよ!
 一、孔明いわく。
 「為政の道の基本は、人々の意見に耳を傾けることにある」
 皆の意見に耳を傾けよ――これが孔明の将軍学の一つであった。
 大勢を指導する立場の人は、一方的に話すだけではいけない。
 皆の意見を聞き、さまざまな問題点を吸い上げ、知恵を結集していく。そこ
から、新しい前進の大波が広がっていくのだ。
 孔明自身、「参署」という機構を設け、そこに各方面の代表を集め、会議を
開き、多くの意見に耳を傾けている。
 孔明は、率先の人であった。「上の立場の者がやることは、皆が見ているも
のだ」と語っている。
 指導者は皆の模範でなければならない。

■時を逃すな!
 一、「時を逃すな」。これが孔明の連戦連勝の勝負哲学であった。
 「貴重な璧(たま)を惜まないで僅かの時間を惜むのは、[物事の]機会は
遭遇し難く[逆に]失い易いものだからである」(中林史朗訳)
 好機を逃せば二度とやってこない。ゆえに、時を逃すなと。
 さらに次のように語っている。
 「立派な指揮官がチャンスに趨むく時は、衣の帯を解くような[のんびりと
した]ことはしないし、履が足跡を残すような[ゆっくりとした]こともしな
いのである」(同)

■ぼやぼやするな
 一、戦いにおいては、積極果敢であった。
 彼は言う。
 「前線の人間はじっと立っていてはいけない」
 「[先頭の兵は](中略)決して立ち上ってそのままじっとしていてはいけ
ない。立ち上ってじっとしていたならば[後方から撃つ]石弓の邪魔になる」
(同)
 戸田先生もよく、「前線の幹部は、ぼやぼやするな!」と叱咤された。
 先頭の幹部が一歩でも二歩でも前進してこそ道は開ける。幹部がぼーっとし
ていれば、後に続く人の邪魔になるだけだ。それでは、幹部失格である。

■断じて驕るな!
 一、国の繁栄をリードする指導者の条件とは何か。彼は断言している。
 「指導者は断じて驕るな」
 「指導者は、決して驕ってはいけない。驕ってしまえば、礼を失う。礼を失
えば、人が離れていく。人が離れれば、民衆が背く」
 リーダーが傲慢になり、礼を失えば、やがては民衆が背いていく――いかな
る国家にも、団体にも当てはまる方程式であろう。
 また孔明は、「小人(=徳のない人)を遠ざけよ」と教えている。
 「賢臣に親しみ、小人を遠ざける」――それが国を興隆させる道なのである。

■「君で決まる」
 一、一方、指導者にふさわしくない者として、8種類の人間を挙げている。
 ①財産に貪欲で飽くことを知らない者。
 ②有能な人を嫉妬する者。
 ③人を中傷することを喜び、おべっかを使う人を近づける者。
 ④人のことは、あれこれ分析するが、自分のことは、何らわきまえない者。
 ⑤優柔不断で、自分で決断できない者。
 ⑥酒を好み、しかも限度を知らない者。
 ⑦虚偽で、臆病な者。
 ⑧言葉巧みで、傲慢無礼な態度の者。
 戸田先生は、幹部に対して、いつも厳しく語っておられた。
 「周りじゃないよ。すべては君で決まる。君の一念で決まるんだ」
 すべては、リーダーの一念で決まる。そのことを、聡明なる皆さんは胸に刻
んでいただきたい。

■戦いに臨む姿勢
 一、ひとたび戦いを起こしたからには、断じて勝たねばならない。
 孔明は、戦いに臨む指導者の姿勢に厳しかった。すなわち自分に厳しかった。
 「一人でも犠牲者が出るならば、それは、すべて私(孔明)の責任である」
とも言っている。
 絶対に、犠牲者を出さない! 落伍者を出さない! 断じて一人も不幸にし
ない!――孔明の指揮は、この覚悟と責任感に貫かれていた。
 また戦いにあたって、指導者は、次の4つに心を砕くべきだと論じている。
 ①意表を衝く方法を用いる。
 ②計画は周到に、緻密に行う。
 ③静かに、落ち着いて事を運ぶ。
 ④全軍の心を一つに団結させる。

■寝床で休むこともなく
 一、有名な「出師の表」の言葉がある。
 「鞠躬(きっきゅう)して尽力し、死して後、已(や)む(身をかがめて真
剣に努力し、死ぬまで戦いをやめない)」
 これは、「20世紀の諸葛孔明」――周恩来総理が愛誦していた名句である。
 また戦いの日々を、こう振り返る。
 「私(孔明)は、先帝(劉備玄徳)より大命を拝した日から、寝る時も、寝
床でゆっくり休むことなく、食事をする時も、じっくり味わうことなく、一心
不乱に使命を果たそうとしてきた」
 さらに、指導者の不動の信念について、孔明は、こうも語る。
 「[自分が]尊重されても驕り高ぶらない、[権限を]委任されても自分一
人で勝手にしない、[他人に]救助されても[その不名誉を]蔽(おお)い隠
さない、[地位を]被免されても驚き恐れない。
 だからこそ立派な指揮官の行動は、ちょうど璧が[どんな時でも]汚れない
[と同様に、どんな状況に在っても決して動揺しない]が如きである」(同)
 不屈の闘志の指導者が勝つ。皆さまもまた、断じて、諸葛孔明の名指揮をお
願いしたい。

■敗北の前兆
 一、何事にも、前兆がある。なかんずく敗北には、必ず前兆があり、原因が
あるものだ。
 孔明は、敗北する組織の前兆として、次の点を挙げている。
 「指導者が弱くなる」
 これは決定的である。指導者に勝利への執念があるか。わが命を燃やしゆく
覚悟で、同志を激励していけるか。幹部の戦う心に、勝敗の一切がかかってい
るといっても過言ではない。
 「皆が私心をもって、徒党を組むようになる」
 皆が私心で動くようになれば、組織は目的を見失ってしまう。
 「おのおのが利害によって派閥をつくる」
 戸田先生は、組織において、派閥をつくる者を絶対に許さなかった。厳しく
叱り、その"傲慢な命"を切っていかれた。
 「心がねじけて、人にへつらうような人間が上の立場につく」
 つまり、人にへつらい、おべっかを使う人間が上の立場につき、それに対し、
周囲が恐れて何も言えないような雰囲気ができる。
 このような傾向は敗北の前兆と言うのである。

優秀な人材を埋もれさせない!!
    ◆◇人材育成論
        一人ひとりの長所を生かせ
        自分の好みで抜擢するな

■必勝の組織とは
 一、では反対に、必勝の組織の条件として挙げたのは何であったか。
 主に次のような点であった。
 「有能な人材が高く用いられる」
 「全体が意気軒高で団結がある」
 「上下の関係が睦まじい」
 「皆が指令にきちんと従う」
 「皆が勇敢に、真剣に戦う」
 「陣容に威風堂々たる雰囲気がみなぎっている」
 「信賞必罰が厳格になされている」
 わが創価の同志も「団結第一」であらねばならない。「意気軒高」であらね
ばならない。
 どこまでも勇敢に、真剣に、そして威風堂々と進んでまいりたい。
 一、では、勝負を決する「人材」を、どう育て、登用するか――。
 孔明は、能力だけでなく「人格」を重んじた。身分などにとらわれることも
なかった。
 「私の心は、天秤のように公平である。人によって、差を設けたりしない」
 これが、孔明の信条であった。
 そして、人材の抜擢について孔明は語る。
 「優れた指導者が政治を行うときは、人(第三者)に有能な人材を選ばせ、
自分の独断では抜擢しない。法に基づいて人々の功績を量り、自分の独断では
判断しない。そうすればこそ、有能な人材は埋もれることがなく、無能な人間
が幅を利かせることもなくなる」
 また、こういう戒めも残している。
 「忠誠を尽くしての最大の貢献は、人材を推挙することである。しかし推挙
に際して、とかく人は、自分の好みに偏ってしまうものだ」
 ひとりよがりのリーダーのせいで、多くの人が苦しむことは、絶対にあって
はならない。
 本当に一生懸命、戦っている人を、最大にたたえ、真心から応援していく。
 皆さんは、そういう"私心なき"リーダーであっていただきたい。
 さらに孔明は「人間は皆が鋭いわけではない。馬は、すべてが良馬ではない。
器械は、すべてが頑丈ではない。それに応じて生かすしかない」と。
 この世に完全なものはない。一人ひとりの長所を生かすことだ――というの
である。

臨機応変の力と勇気を
 一、孔明は、人間の本性を判断するには、次の7つの方法があると言う。
 ①他人のうわさや評価によって、その志や態度が変わるかどうかを見る。
 ②あえて厳しい言葉を投げかけ、その人の態度が、どう変わるかを見る。
 厳しく叱られたときこそ、その人の心根が表れるものである。
 ③計画や意見を尋ねて、その学識を見る。
 これは、その人の学識はもちろん、責任感をはかることにもなるだろう。
 ④大災難の状況を告げて、その臨機応変の力や勇気を見る。
 たしかに、「臨機応変の力と勇気」はリーダーの必須条件だ。
 さらに
 ⑤酒の席で、その本性を観察する。
 ⑥利益や恩恵を与えて、その清廉さを見る。
 ⑦仕事を与えて、その信用度を見る――である。
 一、孔明は、組織や国を乱す者として、次の5種類の人間は気をつけて遠ざ
けよと訴えている。後世への戒めとして紹介させていただく。
 ①徒党を組んで、派閥をつくり、立派な人を妬んで、誹謗する人間。
 ②虚栄心が強く、服装なども贅沢で、奇をてらう人間。
 ③大げさなことやデマを言って、人々を惑わす人間。
 ④自分の私利私欲のために、人々を動かす人間。
 ⑤自分の損得ばかりを考え、陰で敵と結託する人間――である。
 一、人間が人間として生きるために、失ってはならないものは何か。
 孔明は"信念への忠義"を強調している。
 「人に忠義の心があるのは、ちょうど魚が水の深いところにいるのと同じで
ある。
 魚が水を失えば死んでしまうように、人間は信念に対する忠義を失ったなら
ば、社会に害を及ぼしたり、人を傷つけたりする。
 だからこそ、立派な指導者は、忠義を守る。それによって志が立ち、名声が
あがるのである」

逆境を越えて友情は強くなる

■「志」を高く!
 一、後継の世代に対して、孔明は"志を高くもて! むなしく生きるな!"
と教えた。
 「もし意志が強固不屈でなく、感情も激しく高ぶらず、ただ何もしないで平々
凡々と世俗の中に沈滞し、虚しい感情に拘束されてしまったならば、永久に普
通の状態の中に逃れ隠れたまま、品行の悪い下位の状況から逃げ出せないであ
ろう」(中林史朗訳)
 苦労を避け、安逸に流されれば、いつしか生命は萎縮し、沈滞してしまうも
のだ。
 むなしく生きるな! 最高の善のため、使命のため、わが責任を果たすため
に生き抜け!――これが、私どもの信心である。この戦いに、無限の希望と充
実と価値創造がある。
 一、孔明は、わが子にも、こう戒めたとされる。
 「そもそも君子の行いというものは、[心を]清くして身を修め、[身を]
引き締めて徳義を養うものである。あっさりとして無欲でなければ、志を明ら
かにすることはないし、安らかで静かでなければ、[考えを]遠方まで到達さ
せることもない」(同)
 志が人間をつくる。
 それを生涯、貫いてこそ、真に偉大な人生である。
 一、結びに、孔明が語った「真の友情」について紹介したい。
 「勢力や利益を目的とした交際は、長続きさせることが困難である。
 真の男子たる者が互いに知り合って理解し合うということは、[例えば]温
暖になっても[とりたてて]華を増すことはしないし、[逆に]寒雪の時でも
[とりたてて]葉を改めることはせず、春夏秋冬を通じて決して衰えない[と
いうが如く、周囲の状況変化に応じて互いの友情関係が変質することは決して
ない]。[このような関係は]順境や逆境を経れば経るほどますます強固にな
る」(同)
 この夏、我らも、大いに宝の友情を広げてまいりたい(大拍手)。
(2003・8・4)