全国最高協議会4


ローマ最大の雄弁家キケロの獅子吼
「言論は邪悪に勝つ」


 一、賢者の言葉には、不滅の光がある。
 「家に書物なきは、人に魂なきがごとし」
 これは、私が青春時代から大切にしてきた信条であった。
 古代ローマの哲人キケロ箴言と伝えられている。
 「国父」とも讃えられたキケロは、ローマ最大の雄弁家。また政治家、弁護
士であった。〈紀元前106年?紀元前43年〉
 雄弁といえば、"ディベート甲子園"(全国中学・高校ディベート選手権)
で、創価高校創価雄弁会が全国優勝を果たした。2年連続、3度目の大栄冠
である。
 創価中学の創価雄弁会も見事、全国第3位を勝ち取った。創立者として本当
にうれしい。
 一、キケロは、混乱の時代、「哲学」と「言論」をもって、邪悪な権力を糾
弾し、迫害された人々を救った。格調高い、数々の名演説を残している。
 著作も多数におよぶ。テーマは幅広く、文章は力強い。『国家論』『義務に
ついて』『善と悪の究極について』などである。
 ラテン語の散文の「最高の模範」とされ、ヨーロッパの文化の発展に多大な
影響を与えた。

■「あの人の話を聞きたい」と
 一、波乱の時代に希望を贈る哲学の言論。それが学会の伝統である。
 皆さまも、「あの人の話を、もう一度、聞きたい」「あの座談会が忘れられ
ない」と言われるような、友の心を鼓舞する"雄弁の人"であってもらいたい。
 大事なのは、格好ではない。誠実である。勇気である。
 「本当にありがとうございます」「どうかご主人にくれぐれもよろしくお伝
えください」――真心こもる一言が、どれだけ大きな力となり、波動となるこ
とか。
 友の心に染みいるような温かさ。また、動執生疑を起こさせるくらいの力強
い確信。さらには、邪悪を打ち破る、切れ味鋭い正義の論陣。それらが光る言
論の王者であっていただきたい。

青年は直ちに 大きい目標を持ち
それを目指して 熱心に務めよ!

■青年よ大目的を
 一、人間の社会には、嫉妬もある。エゴや策謀が渦巻いている。
 荒海のごとき社会に漕ぎ出す前に、青年よ努力だ。大目的に進め!――キケ
ロは呼びかける。
 「青年の年頃に至るや直ちに大きい目標を前途に置いて、ひたすらそれを目
指して熱心に努めなくてはならない」(泉井久之助訳)
 戸田先生が、「青年は、望みが大きすぎるくらいで、ちょうどよいのだ」と
よく語っておられたことを思い出す。
 一、キケロの青春時代のことである。
 まったく無実の一人の市民が、悪党の不当な訴えによって、冤罪に陥れられ、
悲惨な境遇に突き落とされてしまった。
 この事件を目の当たりにしたことが、「正義の言論」の力を鍛える原点とな
ったと言われる。
 この後、キケロは、ウソの告発を受けた、別の人間の弁護に立ち、大胆にも
独裁権力を公然と非難した。"言論を武器として、横暴な邪悪の輩にも、打ち
勝つことができる"という確信を、彼はつかんでいったのである。

私の弁論の目的は 悪意があり、不公正で
嫉妬深い意図を 粉砕することなのだ!

不正に抵抗できるのに しない人はいわば
親や友人や祖国を 見捨てるのと同じだ

■悪人を糾弾せよ
 一、キケロは嘆いた。
 「美点を妬み、人の偉大さが絶頂にある時にそれを打ち砕きたいと思うのが、
私たちの時代の汚点でもあり、欠陥でもある」(宮城徳也訳)
 山の頂に登れば烈風が吹きつける。偉大だから迫害される。
 しかし、悪意の攻撃を放置してはならない。
 「私の弁論の目的は、これほど明白なことをあなた方(審判人)に証明する
ことではなく、悪意があり、不公正で、妬み深い全ての人々の意図を粉砕する
ことなのだ」(同)
 言論で正義の勝利を!
 それが生涯にわたるキケロの信念であった。
 彼は述べている。
 「悪人どもの大胆不敵な行動を糾弾しよう」(高橋英海訳)
 「万策を講じて育み護持すべきは正義である」(高橋宏幸訳)
 「できるのに不正に対する防御も抵抗もしない人は、いわば、親や友人や祖
国を見捨てるのと同様の過ちを犯している」(同)
 邪悪には断固、言い返せ! ――彼は訴えた。
 防御もしない。抵抗もしない。みすみす、皆を苦しめる。それを"人がいい"
とはいわない。愚者というのだ。
 ひとたび正義が踏みにじられたならば、断じて反論すべきである。

■友情は魂の力
 一、キケロの名声を妬む敵は多かった。しかし真の友人もいた。友情につい
て、キケロはつづっている。
 「友情は数限りない大きな美点を持っているが、疑いもなく最大の美点は、
良き希望で未来を照らし、魂が力を失い挫けることのないようにする、という
ことだ」(中務哲郎訳)
 「真の友人とは、第二の自己のようなものである」(同)
 信じ合える友人。同じ理想へ進む友人。それは力である。希望である。自分
自身が豊かになる。

恩師の冤罪を晴らした不滅の演説
我、師の真実を叫ばん

■全て師のおかげ
 一、キケロの生涯で、ひときわ名高い、不滅の演説のひとつ。
 それは、冤罪を押しつけられた恩師の真実を証明する獅子吼であった。
 不当な告発を受け、ローマ追放の危機にあった恩師。その背景には、権力者
らの陰謀があったと思われる。
 若き日、キケロは恩師から文学の手ほどきを受けた。
 法廷に立った彼は、冒頭、堂々と宣言する。
 ――もし、私に力と才能があるとすれば、そのすべては、この方のおかげで
ある。私は、この方を守るために、すべての力を使う。それが、私の使命であ
る――と。
 キケロは演説の中で、恩師を「最高の詩人」と宣揚した。師の名は、その演
説とともに、歴史に燦然と輝いている。
 一、かつて私は、古代ローマの遺跡を訪れた。〈1961年(昭和36年)
10月。名誉会長は当時、33歳〉
 キケロが活躍した舞台である「フォロ・ロマーノ」を視察した。
 私は一首の和歌を詠んだ。
 ローマの
  廃墟に立ちて
   吾思う
  妙法の国
   とわにくずれじ
 一、ひとつの国や団体が敗北し、滅亡する。その原因は複雑である。
 リーダーという一点も大きい。
 たとえば、苦労知らずで、人の心がわからない。要領に走る。自分中心で、
いい格好をして、いくら動いても空転ばかり。一生懸命、戦う人を応援しない、
励まさない。皆の生活や状況を知らない。いいかげんな人間を重用する――。
 そういうリーダーに対して、戸田先生は非常に厳しかった。
 同志が皆、勝利の喜びをつかみ、勇気凛々と、元気に前進していけるよう、
リーダーは祈りに祈り、あらゆる手を尽くして、全身全霊で道を切り開かねば
ならない。
 勝負というものは激しく、厳しい。それを勝ち抜く真剣な一念が、リーダー
にあるかどうかだ。徹して、やり抜く以外にない。とくに青年部は、そのこと
を、実戦のなかで、わが身に刻みつけてもらいたい。
 一、今、イタリアSGI(創価学会インタナショナル)も大発展し、喜びに
満ちて、平和と文化の行進をしている。メンバーは信頼と友情を社会に広げて
いる。
 創価人間主義を支持して、イタリアの天地に「牧口通り」が一つ、「牧口
公園・広場」が二つ、誕生している。これほどうれしいことはない。
 世界最古の風格が薫るボローニャ大学に招かれて、記念の講演をしたことも
懐かしい。
 〈イタリアには、ペルージャ県に「牧口常三郎通り」、フィレンツェ郊外に
牧口常三郎平和公園」、ステア市に「牧口常三郎平和広場」がある。
 1994年6月1日、ボローニャ大学から名誉会長に「博士」の証である「ド
クター・リング」が授与された。イタリアから名誉会長に贈られた「名誉市民」
称号は41を数える〉

人間主義の味方をつくれ
新しい仲間を増やせ
■友人が増えるのは楽しい!
 一、キケロは、ローマのリーダーたちに呼びかけた。
 「わたしは固く信じている。諸君とローマの騎士たちとの結合と、あらゆる
良識ある人々の固い団結を砕いて壊せるほどの大きな力は、どこにもありえな
いであろう」(小川正廣訳)
 彼の名は、巨大な峰のごとく、歴史にそびえ立っている。
 我らもまた、妙法流布の永遠の歴史に誉れの名を残したい。
 一、さまざまな事業の目的は、ある面からいえば、富を増やすことだ。国の
目的は、繁栄・発展といえよう。
 創価学会の目的は何か。広宣流布であり、世界平和である。「地涌の菩薩を
増やすこと」。これが日蓮大聖人の御遺命である。
 ゆえに、広布の人こそ最高に尊い折伏精神が根本なのである。
 一人の友を救う。一人の味方をつくる。これが何より大事だ。その福運は無
量である。それが学会の底力となる。
 世界は人間主義を待っている。仲間が増えるのは楽しいことである。新しい
多くの友と手を携えて、幸福の大道を進んでいきたい。
 真剣に祈り、励まし合いながら、朗らかに、愉快に、聡明に、創価のスクラ
ムを強めてまいりたい(大拍手)。
(2003・8・4)