誉れの「SGI家族」上・下

一人立て 一人を励ませ 地涌の友よ!

新しき道を開こう!
アフリカに希望の太陽は昇った!

 世界一
  偉大な目的
    この人生
  広宣流布
    闘う人かな

 それは、50年前の2月であった。私は日記に、中国の大文豪・魯迅の一節を書き留めた。
 「道とは何か。それは、道のなかったところに踏み作られたものだ。荊棘《いばら》ばかりのところに開拓してできたものだ」
 第3代会長に就任する3カ月前のことである。
 道を開きたい。いな、断じて、道を開いてみせる!
 恩師亡き後の同志のために、希望の道を。幸福の道を。平和の道を。栄光の道を。そして勝利の道を!
 私は、さらに自らに言い聞かせるように綴った。
 「幹部自身が“我不愛身命”の信仰であれば、わが学会は、永遠に上昇する」
 リーダーが我が身を惜しまず、勇気の一歩また一歩を踏み出していくことだ。率先が最も尊い。真剣が最も強い。地道が最も深い。そこから、新しい道は必ず開かれるのだ。
 師匠・戸田城聖先生のご逝去から2年──。当時、第3代会長の誕生を望む声は、もはや抑え難き潮流と高まっていた。最初に烈々と声が上がったのは、縁も深き埼玉である。
 「第3代と共に、我らは何ものも恐れず戦い勝つ!」──あの埼玉の若き師子たちの叫びを、私は一生涯、忘れることはない。
 さあ、日蓮大聖人の御聖誕、戸田先生の誕生の2月である。今年も断固として勝利の大道を開くのだ!
        ◇
 「『地球村』の一員という連帯意識こそ、平和と人間の安全保障の第一ステップなのです」
 ハーバード大学のドゥ・ウェイミン教授が力強く語られた言葉に、各界の識者も深く頷いておられた。
 1995年の1月26日、ハワイの東西センターでの一幕である。
 「平和と人間のための安全保障」と題する私の講演に対して、ドゥ教授が講評をしてくださったのだ。
 この直前の1月17日、阪神・淡路大震災が起こった。ぎりぎりまで出発の予定を延ばし、私は救援の手を打った。ハワイでの諸行事も、可能な限り凝縮して行わせていただき、逸《はや》る心で、不屈の同志が待つ関西へと直行したのである。
        ◇
 先般、大地震に見舞われた、カリブ海の真珠ハイチでも、わがSGI(創価学会インタナショナル)の同志は、懸命に復興へ奮闘している。私も妻も、題目を真剣に送り続ける日々だ。
 先日も、隣国のドミニカ共和国コマツ婦人部長からご連絡をいただいた。
 この1月24日に、国境にあるSGIの「平和の懸け橋」会館で、ハイチとドミニカの同志が一体で、前進の勇気みなぎる会合を行いました! との報告であった。
 世界の平和と安穏、人類の幸福を祈り、この地球を「善の連帯」で包みゆく私たちSGIの使命は、いやまして重大である。
 SGI結成35周年の本年、心も新たに、我らは地涌の菩薩の陣列を一段と大きく広げていくのだ。
        ◇
 日蓮大聖人が「顕仏未来記」において、高らかに「一閻浮提広宣流布」を大宣言なされたのは、いずこの地であったか?
 それは、離島の佐渡であられた。小さな島から、全世界を照らしゆく平和の大光を、万年の未来へ放たれたのである。
 この大聖人の御境界を偲びながら、創価の第3代の私は1960年、世界広布への第一歩をハワイに印した。そして、SGIの誕生の天地はグアムに定めたのである。
 ハワイもグアムも、沖縄とともに、戦争に苦しめられた島である。
 1975年の1月26日、51力国・地域からグアムヘ勇み集った友に、私は呼びかけた。
 「全世界に妙法という平和の種を!」
 それは、私自身の深い決心でもあった。
 今、192力国・地域に広がった種は、それぞれの大地から力強く芽吹き、花開き、爛漫と咲き誇っている。すべての風雨を乗り越えて我々は勝ったのだ!
 原点の地ハワイでも、グアムでも、この「1・26」を最大の真心で祝賀してくださった。
 すべて、わが誠実の同志への信頼の結晶である。アメリカSGIをはじめ、全世界の同志と分かち合わせていただきたい。
 健気な日本の離島部の友の活躍も、見事である。
 「SGIは生命尊厳の仏法を基調に、全人類の平和・文化・教育に貢献する」──「SGI憲章」に謳ったこの大精神のままに、私たちは、ますます生き生きと社会への貢献に尽力してまいりたい。

 あな嬉し
  世界の友も
    晴れ晴れと
  広布の模範の
    皆様 讃えむ

アフリカの世紀に
 ガーナ独立の父・エンクルマ初代大統領は叫んだ。
 「幸いなことに、歴史は、それ自身の主要な法則──すなわち、芽ぶきつつある将来はつねに枯れつつある過去より強いという法則──の無数の証明を与えている」
 私が第3代会長に就任した1960年は、まさに「アフリカの年」と呼ばれた。
 この年の元日に、アフリカのカメルーンが独立を果たした。さらに、セネガルトーゴガボンなど、17力国が次々と独立を果たしていったのである。
 初の平和旅の途次、私たちは、ニューヨークの国連本部を訪問した。
 建国の息吹に満ち満ちたアフリカ諸国の指導者の姿を目の当たりにし、私は「21世紀はアフリカの世紀!」と予見した。いな、熱願したのである。
        ◇
 アフリカには、「千は一から始まる」ということわざがある。
 1974年の1月、ガーナに赴任する聖教新聞の若き特派員に、私は言った。
 「やがて多くのアフリカの友が、仏法を求めて日本にやってくるよ。50人、100人、そして1000人。必ず、すごい時代になるだろう──」
 当時、それは、夢物語に聞こえたかもしれない。
 だが、師匠から託された世界広布の大願を果たすため、アフリカの大地から地涌の菩薩を呼び出さずにおくものか──これが私の覚悟であり、誓いであった。
 私は、ひたぶるに祈り続けた。一人また一人、ありとあらゆる機会に、アフリカの友を全力で激励した。声高らかに、アフリカヘのエールを送り、人知れず、手を打ち続けてきた。
 御聖訓には、「物たね(種)と申すもの一なれども植えぬれば多くとなり」(御書971?)と仰せである。
 蒔かぬ種は生えない。妙法の種を労苦を惜しまず、一つ、また一つ蒔き続けていく。そのたゆみない繰り返し以外に、広宣流布の前進はないのだ。

芽吹いた妙法の種
 なぜ、仏法がアフリカに広がったのか?
 その答えを見つけるために、自ら現地へ足を運び、民衆の輪に飛び込んで取材を重ねた日本の識者がいる。
 名画「名もなく貧しく美しく」など数々の傑作を残した映画監督で、作家としても高名な松山善三先生、その人である。
 1980年代の半ばのことだ。
 アフリカ広布の先駆を切ったガーナでSGIメンバーの取材をしていると、そこへ突然、隣国トーゴから車でやって来たという3人の若人が現れた。その一人の女性が、現在のトーゴSGI理事長であるイダ・アジェビさんであった。
 「西アフリカの名医」として名高い彼女は79年、フランス留学中に入会した。3年後、母国のトーゴに戻り、たった一人で活動を開始した。その後、アメリカから来た創価の女性と一緒に折伏を重ねていった。
 メンバーは、この時、68人にまで広がっていた。その名簿を手に「座談会の開き方や、御書のことを教えてもらいたい」と、国境封鎖が解けるのを待って、ガーナまで求道の歩みを運んできたのだ。
 松山先生はもちろん、居合わせたSGIメンバーも驚嘆した。誰も知らないところで妙法の「種」は、しっかりと大地に根を張っていたからである。
 トーゴSGIでは、1985年に「地区」が結成され、イダさんが初代の地区部長に就任した。それが、2000年には「本部」にまで発展した。
 今やメンバーは飛躍的に拡大し、1000人規模の大総会も開催。青年を先頭に、はつらつと大前進している。
        ◇
 松山先生は綴られた。
 「誰が、その地へ題目を伝えたか。誰がそれだけの信徒を集めたか。寺の僧侶ではない。名もなき学会員の一人ひとりが、自分の足を運んで、その功徳をわかち合いたいという願いによってである」
 誰かに言われたわけではない。自らの生命に湧き出ずる歓喜を、一人でも多くの人と分かち合いたい。その思いを抱いた一人が、身近な一人と対話を交わし、また一人へと広がった。
 壮大な世界広布の潮流も源流をたどれば、どこまでも一対一の「対話」が基本である。
 思えば、恩師・戸田先生は法難の獄中で、「仏とは生命なり」「われ地涌の菩薩なり」と覚知なされた。その時、仏法の人間主義の哲理は、現代に生き生きと蘇ったのである。
 私たち創価の友は、「生命尊厳」と「人間尊敬」の仏法を、全世界に弘めゆく使命をもって、この世に生まれてきた地涌の菩薩だ!
 「撰時抄」には厳然と仰せである。
 「法華経を二人・三人・十人・百千万億人・唱え伝うるほどならば妙覚の須弥山ともなり大涅槃の大海ともなるべし仏になる道は此れよりほかに又もとむる事なかれ」(同288?)
 この御金言の通りに、妙法に巡りあった平和と歓喜の大連帯は、国境も超えて民衆を結び、一閻浮提に波動してきたのである。
 我らSGIは、永遠に「一人立つ」精神を燃やし続ける!
 そして、いかなる人も尊極の仏の生命を持った存在であるゆえに、どこまでも「一人」を大切にし、励まし続けるのだ!

一番苦しんだ人が 一番幸福に!

地球を舞台に異体同心の人間讃歌を

 君ありて
  広布の流れは
   幾重にも
  世界の果てまで
     勇み進まむ

 コンゴ独立の指導者ルムンバ初代首相は叫んだ。
 「前途がいかにけわしいものであろうと、ゆるぎない意志と全幅の自信をもって努力してゆかなければならない。座して待つのみでは、決して境遇を改善することはできない」
 そして言い切った。
 「熱意をもつものは、進んでみなの先頭にたたなければならない」
 勇敢に立ち上がれ! ここに、先駆者の魂があり、責任がある。
 「第2の10年」に進む21世紀──。
 今世紀を、真の意味で「アフリカの世紀」と輝かせていく眼目は何か。
 それは、最も苦しんだ人びとが、最も幸せになるという証を、全世界に宣揚することだ。
 最も虐げられた人びとこそが、社会変革の主役として堂々と胸を張って躍り出る、民衆勝利の時代を開くことだ。
 アフリカが「幸福大陸」にならずして、真実の世界平和は訪れない。
 この地球は「我此土安穏」の大理想とは、いまだ遠くかけ離れている。
 経済格差や貧困、政情不安や治安の悪化など、国によって、さまざまな問題を抱えている。内戦の余燼がくすぶる地域もある。
 そのなかで、アフリカの同志が、どれほど勇敢に妙法を弘め抜いてこられたか。その筆舌に尽くせぬご苦労は、十方の仏菩薩も、必ずや御照覧であろう。
        ◇
 「夜はどんなに長くとも夜明けは必ず来る」と、コンゴの格言にある。
 勝利の朝《あした》を開く、希望の光こそ、青年だ。
 アフリカで今、SGI(創価学会インタナショナル)が旭日の勢いで発展し、未来を担う後継の青年たちが続々と成長していることほど嬉しいことはない。
 この新春の聖教新聞は、アフリカからの朗報が紙面に光り輝いた。
 中部アフリカのガボンで地区が結成されたニュースは、世界のSGI家族に喜びの笑顔を広げた。
 隣接するカメルーンでは、5本部から8本部に発展した。このカメルーンの国立植物園では、光栄にも、私の木まで植樹してくださった。樹齢100年の「大樹《たいじゅ》」に育つという木の写真を拝見しつつ、私は無限に伸びゆくアフリカの未来を祈り合掌した。
 アフリカ東部のケニアや南部のザンビアなど各国でも、わが同志は創価の旗を掲げて躍動している。
 さらに西アフリカのトーゴでは、実にメンバーの約7割が青年だ。
 内戦に苦しんできた、同じ西アフリカのコートジボワールでも、10年で10倍もの拡大が達成されている。
 2004年3月、本部幹部会の席上、尊きSGIの全同志に捧げゆく思いで、遠来のコートジボワールの2人の青年に、「月桂冠」と「花のレイ」を贈り、肩を組んで語り合った。
 心を尽くせば心が応えてくれる。そこに師弟の魂の脈動もある。青年たちは、喜びと感謝の心で勇み立って、妙法流布の原動力となってくれた。今や2万人を超えたメンバーの約半数を青年が占めている。
 この年頭も、首都のヤムスクロで600人、最大の都市アビジャンで800人の御本尊授与が行われた。
 「広宣流布のため、師匠と共に、一生涯、戦い続けることを誓います!」
 儀式の折、はつらつたるアフリカの地涌の若人は、まさに舞を舞うが如く、はち切れんばかりの勢いで誓願を立てる。
 欧州と日本から祝福に駆けつけたリーダーも、その圧倒的な若き地涌の群像に、感涙を禁じ得ませんでしたと語っていた。
 未来は、青年で決まる。先輩は後輩を温かく見守り、青年は先輩を尊敬しながら、どこまでも仲良く麗しい創価の結合で前進していくのだ。そこに、仏法の命脈は限りなく流れ通っていくからだ。
        ◇
 私が「アフリカの世紀」を展望して50年──。
 今や53力国・地域からなるアフリカ連合(AU)の結成に続き、近年は「アフリカ合衆国」として統一を模索するなど、希望の大陸は国際社会で着実に地歩を固めつつある。
 合衆国の夢が実現すれば、世界最大の面積を持ち、人口約10億人の大国の誕生となる。
 今年は、アフリカ大陸初となるサッカーのワールドカップ(W杯)の南アフリ力大会も控え、注目の的である。
 20年前(1990年)に最初の出会いを刻んだ“人権の巌窟王マンデラ元大統領も、どれほど喜ばれていることだろうか。
 昨秋、創価大学のパン・アフリカン友好会の友が、元大統領の最近の発言を教えてくれた。90歳を超えて健在の賢者の言葉だ。
 「個人の生活、また地域社会において、他の人を深く思いやることは、私たちが情熱的に夢見てきた、より良い世界の建設に、大いに貢献するものです」
 「壊したり、破壊することは非常に簡単なことです。平和を築き、何かを建設する人こそ英雄です」
 その通りだ。今いる場所で、友のために心を配り、行動する日常の戦いのなかにこそ、理想の世界は築かれていくのである。
 ともあれ、政治、経済のみならず、スポーツ、環境、芸術など、いずれの分野でも、世界はアフリカ抜きに語れない時代となった。
 「アフリカの栄光の世紀」は、これからが本番だ。
 「希望は世界の柱だ」と、ナイジェリアのことわざにある。「希望大陸」アフリカが、世界の明日を築き支える黄金柱なのだ!
        ◇
 アメリカ文化を代表するジャズ音楽も、アフリカと深く結びついている。
 ジャズは、あまりにも過酷な逆境のなかから、アフリカ系アメリカ人(黒人)によって育まれた「魂の音楽」である。
 そのジャズの王者であり、わが同志であるハービー・ハンコックさんとウェイン・ショーターさんが語っておられた。
 ──ジャズとは、まさに「最悪の環境や境遇と向き合い、乗り越えながら、偉大なる価値を生み出すという人間の特質」の証明なのです、と。
 そこには、仏法の「変毒為薬」にも通ずる、気高き「人間の讃歌」がある。
 日蓮大聖人は「賢者はよろこび愚者は退く」(御書1091?)と仰せである。
 人生も、社会も、試練の時こそ、この賢者の魂で、前進していくことだ。

チャンスを活かせ!
 統一ドイツのワイツゼッカー初代大統領は、東西が一つになったその日、次のように宣言した。
 「歴史がわれわれにチャンスを与えてくれています。われわれは成功を確信し、自他の信頼を胸にこのチャンスを活かしていくつもりであります」
 御聖訓にも、「異体同心なればか(勝)ちぬ」(同1463?)と御断言である。揺るぎない「自他の信頼」を根本とした団結こそ前進勝利の偉大な力だ。
 アフリカなど各国でも、かつて、あの腐敗堕落の日顕宗が、清浄なるSGIの組織を破壊しようと暗躍した時期があった。
 だが、仏の軍勢は微動だにしなかった。SGIは、永遠に「異体同心の団結」で勝ち進むのだ!
 信心に、地理的な距離は関係ない。創価の師弟は、どんなに遠く離れていようが、心は常に一緒であり、常に一体なのである。
        ◇
 SGIが誕生した35年前(1975年)のあの日、地平線の彼方に昇った日蓮大聖人の世界仏法の太陽は、今、中天に燦然と輝き、地涌の友の活躍を見守っている。
 大聖人は、地涌の菩薩が大地から涌出する意義について、「涌出とは広宣流布の時一閻浮提の一切衆生法華経の行者となるべきを涌出とは云うなり」(同834?)と仰せだ。
 今、意義深きこの時に涌出し、集った、誉れ高きSGI家族よ! 尊きパイオニア地涌の友よ!
 さあ「いよいよ」の決意に燃えて、勇敢に打って出よう! 今日より明日へ、勝利また勝利の前進だ!
 全世界、全地球に乱舞しゆく妙法の勇者と共に!

 この一年
  福運十年
    積みゆけと
  意義ある闘争
     創価を守れや


 魯迅の言葉は『魯迅評論集』竹内好訳(岩波書店)=訳文は現行本に合わせた。エンクルマは『新植民地主義』家正治・松井芳郎訳(理論社)。松山善三は『ああ人間山脈』(潮出版社)。ルムンバの言葉は『祖国は明日ほほえむ』中山毅訳(理論社)。ワイツゼッカーは『言葉の力 ヴァイツゼッカー演説集』永井清彦訳(岩波書店)。