海外代表会議
◆◆◆「信心」は逆境に勝つ「宝剣」
【戸田先生】
苦難を乗り越えた人はすごい力が出るものだ。
不幸な人の味方になれる。
【ソロー協会が「SGI憲章」を評価】
アメリカ・ルネサンスの精神と共鳴
一、私は現在、「アメリカ・ルネサンス」の哲人ソローらをめぐって、語ら
いを重ねている。
アメリカのソロー協会のボスコ会長、マイアソン事務総長との、てい談であ
る。
アメリカ・ルネサンスは、ご存じのように、19世紀のアメリカに、新たな
精神の息吹をもたらした文芸・哲学運動である。「知性の独立革命」とも謳わ
れている。
語らいのなかでマイアソン博士は、SGI(創価学会インタナショナル)の
理念と運動は、このアメリカ・ルネサンスの最良の精神性を見事に体現し、世
界に実現しようとするものであると高く評価してくださっている。
一、ソローは叫んだ。
「私が当然ひき受けなくてはならない唯一の義務とは、いつ何どきでも、自
分が正しいと考えるとおりに実行することである」(飯田実訳)
不正に従うな。良心に従え! 正義に従え! いかなる権力にも縛られない、
自立した一人の人間として生きよ!
人間よ人間であれ!
この哲人の叫びを実現する21世紀にしたい。
地球上の人々が「生命の世紀」「平和と人道の世紀」を心から待っている。
世界の良識と手を携えて、新しき希望のルネサンスを燦然と開花させてまいり
たい。
■変革は「内なる智慧」の開拓から
一、ボスコ会長は、「SGI憲章」の前文について、「すべての社会変革は、
個人の『内なる智慧』の開拓と『人間精神の創造性』の涵養(かんよう)とと
もに始まることを提起している」と述べ、大きな共感を寄せられている。
また、マイアソン博士は、「SGI憲章」の一つ一つがアメリカ・ルネサン
スの精神と深く共鳴すると指摘されている。
SGI憲章の第1で「生命の尊厳」を掲げた点について、博士は「自然世界
の万物を尊重した」エマソンとソローの思想と一致すると見ておられる。第2
に「いかなる人間も差別することなく基本的人権を守る」とあるのは、「奴隷
制度への反対運動に関与した(アメリカ・ルネサンスの)人々の基本的思想」
と重なり合う。
第3に「『信教の自由』を尊重し、これを守り抜く」とあるのは、アメリカ・
ルネサンスの担い手が、「自身の信条を実践できるように、体制化された宗教
の軛(くびき)からの解放を求めたこと」と軌を一にする。
第4に「人間の交流(を基調に各人の幸福達成に寄与する)」と掲げたのは、
「エマソンとソローが、社会のすべての階層の人々に(自分たちの主張が)到
達するよう、講演や出版をしたこと」に通じる。
さらに第5の「それぞれの国・社会の良き市民として、社会の繁栄に貢献す
ることを目指す」は、「アメリカ・ルネサンスの作家たちが読者に、社会の再
評価、そして自身の社会に対する関係の再評価を要請したこと」と響き合う。
■文化を結び世界と対話
一、またSGI憲章の 第7に「他の宗教を尊重して(人類の基本的問題に
ついて対話し、その解決のために協力していく)」とあるのは、「(アメリカ・
ルネサンスの担い手たちが)世界の諸宗教の理念を研究し、エマソンとソロー
が東洋の文献をアメリカで入手できるようにすることに関与した」ことと重な
る。
第8に「文化の多様性を尊重し、文化交流を推進」と掲げているのは、「エ
マソンとソローが、西洋人に対し中東やアジアにある非西洋的文化の存在に気
付くことを願った」のと通じ合う。
第9で「自然保護・環境保護」を強調しているのは、「エマソンか、ソロー
が書いたとしてもよい内容」である。
そして、第10に教育、学問を興隆させるとともに「あらゆる人々が人格を
陶冶し、豊かで幸福な人生を享受」できるようにすると謳っているのは、アメ
リカ・ルネサンスの旗手たちが支持したであろう「人生の目的」を表現してい
ると、心から賛同してくださっているのである。
このように、アメリカ社会でも、SGIの人間主義の運動に大きな支持が広
がっていることは、皆さま方がご存じの通りである。
一、アメリカ公民権運動の指導者・キング博士は訴えた。
「われわれは、相互の信頼、清廉、闘争性などが浸透している組織が必要な
のだ。この精神がなくては、われわれは数だけはたくさんもつかもしれないが、
結局はゼロということになってしまうのである」(猿谷要訳)
私たちには深き信頼の絆がある。清廉がある。戦う心が燃えている。
日蓮大聖人の仏法を基調に、平和・文化・教育の大光を世界に広げゆく理想
の組織が、SGIである。
世界の最高峰の知性も志向してきた最も正しき人生の軌道を進んでいること
を、私たちは喜びとし、誇りとしたい。
■悪の根を断て
一、ギリシャの哲学者プラトンは、つづっている。
「権力者たちの多くは悪い人間となるのだ」(内藤純郎訳)
「不正が人目を逃れた者は、さらにいっそう悪い人間となる」(藤沢令夫訳)
悪は放置すれば、ますます増長する。悪を糾し、正義を打ち立てるのは、相
手のためでもある。
大事なのは悪の"根を断つ"ことだ。破邪顕正の言論で、一凶を禁じなけれ
ばならない。
根本は祈りである。あらゆる邪悪を、唱題の利剣で打ち破っていくのである。
戸田先生の邪悪に対する怒りは、すさまじかった。巌窟王のごとき不屈の信
念は、右に出る人はいなかった。ここに創価の魂がある。
青年ならば、民衆を苦しめる邪悪と断固、戦うことだ。戦って強くなること
だ。自分が強くなるために、敵がいるのだ。
悪に負けるような青年は、青年ではない。断じて勝たねばならない。
一、長い人生である。試練の時もあれば、苦難の時もある。
あの大文豪ゲーテも、回想している。「私の長い生涯においても、輝かしい
境遇が続いていると思ううちに状況が一変して、つぎつぎに不幸に見舞われる
ということがたびたびありました」(小栗浩訳)
そういう場合には、「私に残っている限りの行動力をできるだけふるい立た
せて」、いちかばちかの戦いを力の限り続けながら、今日までどうにか切り抜
けてきた――というのである。
ゲーテは、たじろぐような苦難と戦い続け、それに打ち勝って、人類史に輝
く文学作品を残したのである。
■「大きな障害は勝利の前兆」
一、カナダの女性作家モンゴメリーは、主人公の"赤毛のアン"に、こう語
らせている。(『アンの愛情』)
「わたしはね、小さな障害は、笑いの種だと思い、大きな障害は、勝利の前
兆だと考えられるようになったの」(掛川恭子訳)
大きな障害は勝利の前兆――いい言葉である。
状況が厳しければ厳しいほど、強気で人生を生き抜いていくことだ。
勇気をもって、断固として前へ、また前へ、突き進んでいくことだ。
御書には、「わざはひ(禍)も転じて幸となるべし」(1124ページ)と
仰せである。皆さまには「祈りとして叶わざるなし」の妙法がある。
戸田先生は、師子吼なされた。
「真の功徳は、折伏を知らぬ者にはありえない」
「大聖人の仏法は、逆境にある人が、幸せになる宗教なのだ。
苦難にあった人ほど、それを乗り越えた時、すごい力が出るのだ。その人こ
そが、本当に不幸な人々の味方になれるのだよ」
困難を勝ち越えたからこそ、人間として光っていける。友の心がわかる、懐
の深いリーダーヘと成長できる。
日蓮大聖人は仰せである。「剣なども、前進しない(臆病な)人には何の役
にも立たない。法華経の利剣は、信心の勇気のある人こそ、使うことができる
のであり、これこそ鬼に金棒なのである」(同ページ、通解)
勇気ある信心こそ無敵の宝剣である。強き信力、行力が、仏力、法力を出だ
し、諸天善神を動かしていく。強盛な祈りと不屈の「負けじ魂」で断じて勝利
の人生を切り開いていただきたい。
◆◆青年よ強くなれ! 戦って強くなれ!
■団結が勝利の力
一、さらに大聖人は、敵がいるなか、信心に励む池上兄弟に仰せである。
「二人が団結した姿は車の両輪のようなものである。鳥の二つの羽のような
ものである」「僭越であるが、日蓮のことをともに尊敬していきなさい。もし、
二人の仲が不和になったならば、二人に対する、目には見えない仏や諸天の加
護が、どのようになるだろうかと考えていきなさい」(御書1108ページ、
通解)
団結である。御本尊への強き信心が揺るがないことである。
その人は、必ず守られ、勝利していける。
たとえ一節でもいい、御書をわが身で読んでいくことである。
■どんな困難にも心軽やかに!
一、きょうは、アメリカ創価大学の教職員の代表も参加しておられる。大学
建設に尽力してくださっている教職員の皆さま方、学生の方々に、心より御礼
申し上げたい。
この夏、最優秀の第3期生が新たに入学した。秋からは、アメリカ創価大学
からの留学生を、日本の創価大学に迎える。
来年には創価大学に、ホイットマン、ユゴー、トルストイ、ダ・ヴィンチ等
の像に加え、新たにウズベキスタンの15世紀の大詩人ナワイーの像が設置さ
れる予定である。(ナヴァーイー、ナヴォイとも)
ナワイーは「中央アジアのゲーテ」とも讃えられる。迫害に屈しなかった哲
人指導者でもある。結びに、このナワイーの箴言を皆さまに贈りたい。
「嘘を生業とする不実の輩は、男とは呼べぬ。いかなる狡知をめぐらそうと
も、哀れな結末から、彼は逃れられぬ。
たとえ、全民衆を騙しおおせたとしても、因果応報の理からは逃れられぬ」
「嘘と、世の虚飾に屈伏するな! 英知に親しめ!」
「疲労やわびしさ、悲哀など吹き飛ばすのだ!
迫害の嵐に晒される運命にあっても、心軽やかに乗り越えていこう。
どんな大きな困難であっても、心軽やかに立ち向かう人が、勝利者となるの
だ」
皆さま方は、それぞれの国、それぞれの地域における、偉大なる「人間革命」
と「一生成仏」の「手本」の存在である。
そして、「異体同心」と「広宣流布」の手本を、末法万年にわたって示しゆ
く「原点」の人である。
ゆえに、一人ももれなく、健康で長生きをしていただきたい。全員が「所願
満足」の大勝利者として、この一生を飾りゆかれることを祈って、私のスピー
チとしたい。
またお会いしましよう! きょうは、本当にありがとう!(大拍手)
(2003・9・5)