チャップマン大学名誉博士号授与式

◆◆◆精神の「無眼の力」を引き出せ! 

◆〔シュバイツァー〕 「新たな精神の創造が すべての問題を解決」

◆◆チャップマン大学の「一人を大切にする教育」を尊敬

【SGI会長の謝辞】

 一、はじめに、創価大学、女子短大の教職員の皆さま、ご列席くださり、ありがとうございます。
 わが創価大学も、創立30周年の一つの峰を越えて、今、新たな発展への基盤ができつつある。
 その中にあって、未来の指導者に育ちゆく創大生、短大生のために、教職員の皆さまが、どれほどの情熱と愛情を注いでくださっていることか。
 私も胸中で、深く感謝し、皆さまのご健康とご多幸を日々、真剣に祈っております。
 また、女性の教職員の皆さまが、創価大学の柱として、懸命に尽力してくださっていることも、よく存じ上げています。本当に、ありがとうございます(大拍手)。

■語学力を磨け! 

 一、国際的な式典でもあり、本来ならば、英語で御礼のスピーチをしたいのですが、一番、得意な日本語で(笑い)、あいさつをさせていただきます(大拍手)。
 私の青春時代は、戦争中で、英語を学ぶことは「国賊(こくぞく)」扱いされ、許されませんでした。
 戦後は、「これからは、絶対に英語の時代だ」と強く感じて、個人教授で英語を学びました。
 しかし、その教師が良くない人物で、謝礼のことばかり考えて、誠実には教えてくれなかった。

 さらに、その後、人生の師のもとでの激闘が始まり、結局、語学を習得する機会を持てなかったことが、私は、今でも悔やまれてなりません。
 だからこそ、青年たちが世界市民として、思う存分、語学力を錬磨(れんま)できる最高の学びの場を贈りたい――これが私の願いでありました。
 今、この夢は、創価学園でも、創価大学でも結実しています。多くの言語で、わが創価同窓生が日本を代表する名通訳として、大活躍する時代に入りました。
 本格的な語学力が求められています。創大生も、また、学園生も、全力で語学の力を磨き抜いていただきたい。教員の皆さまも、よろしくお願いします。
 まばゆき陽光に輝くオレンジ郡の天地には、世界市民を育成しゆく、アメリ創価大学が誕生しました。
 そして、この生まれたばかりの大学を、最も近くで、最も温かく、最も大きな友愛の心をもって、迎えてくださった恩人が、貴・チャップマン大学なのであります(大拍手)。
 〈チャップマン大学は、アメリ創価大学と同じオレンジ郡にある〉

◆◆◆教育に「一対一の対話」を

◆〔エマソン〕「政治に先んじて教育を主とせよ」

◆◆◆人間性の社会へ『教育力』を復権!! 

■頭脳だけでなく心を鍛えよ! 

 一、心より尊敬申し上げるドティ学長ご夫妻。シャバーニ副学長ご夫妻。さらに、ご列席の皆さま方。
 ただいま、私は、創立142年の歴史を誇る、「世界市民教育の大殿堂」から、最上の栄誉を拝受(はいじゅ)いたしました。
 崇高(すうこう)なる貴校の理念を深く胸に刻みながら、その実現に、私も全力を尽くしてまいる決心です。まことに、まことに、ありがとうございました(大拍手)。
 貴大学の壮麗(そうれい)なキャンパスには、人道の賢者シュバイツァー博士の名前を冠(かん)した散策の道が広がっています。
 そこに掲げられた博士の言葉の一つに、こうあります。
 「精神とは、実に力強いものである。人間の心に、新たな精神が創造されたならば、すべての問題は解決するであろう」
 様々な問題が山積した今こそ、噛みしめたい箴言(しんげん)です。
 いかに時代の闇が深くとも、あらゆる人間の心に存在する、精神の尊極(そんごく)なる光を信ずることです。そこに教育の出発点もあるといってよい。
 「頭脳」を磨くだけではない。「精神」を鍛えていくことです。人に尽くす豊かな「心」を教えていくことです。
 その意味で、一人ひとりの幸福を願い、その若き生命から「新たな精神の力」を無限に引き出していく芸術こそ、人間教育の真髄なのです。
 教育は、人間が人間らしく、「幸福を勝ち取る力」を育(はぐく)むものです。
 また、教育は、人間が人間として、「社会に貢献する力」を鍛えるものです。
 そして、教育は、人間が人間とともに、「価値を創造しゆく力」を伸ばすものなのです。

 一、現代は、真の対話が失われつつあります。
 我(われ)尊(たっと)しと傲(おご)り、他の人間を軽んじる風潮の社会でもある。対話とは、平等なものです。慈愛と、誠実と、真心によってなされるものです。
 その中にあって、真剣な教育者による「一対一の対話」が、どれほど未来の世代を励まし、幸福と平和の方向へ啓発していくことか。
 戸田先生も、牧口先生も教育者でしたが、お二人とも「一対一の対話」を実践されていました。もちろん、「全体」という観点もありましたが、根本は、一人ひとりの個人に注目していたのです。

 アメリカ・ルネサンスの哲人、エマソンは、「他日(たじつ)必らず吾々は政治に先(さき)んじて教育を主とすべき事を知るであろう」(戸川秋骨訳)と提唱していました。
 まったく同感です。教育よりも政治を優先するのは愚かです。人間を人間として育てる教育こそ、一切の根本です。
 まさしく、教育力の復権こそ、人間性復権に通じる。これしかないのです。

■歴史的な初授業

 一、貴大学の最初の授業が行われたのは、1861年の3月4日――。あのリンカーンが、第16代大統領に就任した、その日であります。
 以来、貴大学は、人間の「尊厳」と「平等」と「共生」の光を明々(あかあか)と放ってこられました。
 その伝統を体現(たいげん)し、教育ルネサンスの指揮を厳然と執(と)っているのが、学長ご夫妻であり、副学長ご夫妻であります(大拍手)。

 一、貴大学においては、教授陣が、学生一人ひとりに必ず光を当てて、名前を覚え、語り合い、学び合っておられる。
 そして、知的にも、精神的にも、また社会的にも、さらに身体的にも、全体人間としての薫陶(くんとう)を進め、第一級の世界市民を育成されています。
 その歴史と行動に、私たちは、心からの感銘と共感を禁じ得ないのであります。

 一、思えば、貴大学の名前に掲げられたチャツプマン氏は、「世界のオレンジ王」と謳(うた)われた大実業家であり、奉仕と献身の人生を、誇り高く生き抜かれました。
 このチャップマン氏は、中国の南京(なんきん)周辺にも、人道貢献の病院を建設し、長年、支援されました。
 忘れてはならぬ史実は、日本軍が、その病院まで残虐(ざんぎゃく)に爆撃し、破壊していたという蛮行(ばんこう)です。
 その同じ時代に、軍部権力と勇猛(ゆうもう)に戦い抜いて獄死した殉教者が、創価教育の父・牧口初代会長でありました。
 この“師子の魂”を受け継ぐ私たちは、平和を推進し、社会正義を拡大されゆく貴大学に一段と深く学びたい。
 そして、若き世界市民の「人間主義の大連帯」を築いてまいりたいのです(大拍手)。

◆◆◆〔チャップマン大学を訪れたキング博士〕
    未来を信じたまえ! 困難の時があろうとも正義のための闘争を宇宙が味方している! 

■嘘は滅びる

 一、貴大学を訪問した人権の母・エレノア・ルーズベルト大統領夫人が訴えた通り、文明社会の平和とは、相互に理解し、尊敬しあう交流によって、創出(そうしゅつ)されるものです。
 いかなる対立や葛藤(かっとう)も超えて、人間と人間、青年と青年をつなぐ、教育の「結合の力」にこそ、21世紀の希望があると、多くの教育者が信じています。私も、その一人です。
 1961年の12月、非暴力の闘士キング博士は、熾烈(しれつ)な悪戦苦闘の最中(さなか)、貴大学に足を運ばれました。キング博士は、貴大学で、先哲の言(げん)を引きながら、「いかなる嘘も永遠に生き続けることはできない」と明確に断言されています。
 至言(しげん)です。この言葉を学生の皆さんは、深く胸に刻んでいただきたい。
 そして、キング博士は、高らかに叫びました。
 「未来を信じたまえ! 困難の時があろうとも、正義のための闘争において、我々には、宇宙が味方していることを忘れまい。 未来への確信と決意があれば、正義を現実のものとするために、さらに遠くへと進むことができるだろう」と。
 我らも、この精神でいきたい! 粘り強く! 
 過去ではない。「未来」で決まるのです。未来に勝つか負けるかです。

 一、きょうは、わが愛する創価大学の大切な大切な学生の代表、また、尊き向学の心に燃ゆる留学生の皆さん方、さらにまた、アメリ創価大学の栄光の1期生が出席してくれております。本当に、ありがとう! (大拍手)

■人間教育の都(みやこ) オレンジ郡

 一、私たちは、尊敬する貴大学の先生方とご一緒に、「人間精神の勝利の世紀」へ、さらに断固として前進していくことをお誓いしたい。

 明年は、貴大学がオレンジ郡にキャンパスを開かれてから50周年です。
 貴大学を敬愛してやまぬ隣人として、私たちは、この佳節(かせつ)を最大にお祝い申
し上げたい(大拍手)。
 そして、我らの人間教育の都・オレンジ郡の前途洋々(ぜんとようよう)たる栄光を心からお祈り申し上げ、私の謝辞といたします。
 サンキュー・ベリー・マッチ! (大拍手)

2003.12.16