創価教育代表者会議での創立者のスピーチ〔上〕


◆◆◆ 青年のため わが心を尽くせ
◆◆≪戸田先生≫ 技術の受け売りではなく「人間対人間」が大事
    ── はつらつと語れ! 生き生きと動け!


創立者のスピーチ】
 創価教育代表者会議が3日、長野研修道場で行われ、創立者の池田名誉会長がスピーチした。

 一、遠いところ、またお忙しいなか、本当にご苦労さま!(大拍手)
 きょうは創価大学・女子短大、アメリ創価大学、そして東京・関西の創価学園の代表等が参加してくださっている。
 教員、そして職員の皆さまは、気宇壮大に前進していただきたい。
 大いなる理想と気概に燃えて、生き抜いていただきたい。
 学生に希望を与え、立派な、力ある人材を育てていく。教育ほど尊い聖業(せいぎょう)はない。
 戸田先生は、一介の青年であった私を、全魂を注いで教育してくださった。
 世界の一流の人物とも自在に語り合えるほどに、薫陶してくださった。まさしく「教育の勝利」であった。
 教育が人間をつくる。未来を開く。この誇りを決して忘れないでいただきたい。


◆◆ 気宇壮大に大人材を!
    ── 三代の師弟の闘争に創価教育の魂

◆大闘争の時代を勝ち抜け!
 一、私は創立者として、全力で創大・学園の発展に取り組んでいる。
 キャンパスの建物や設備についても、皆さんと協議し、さらに充実を期してまいりたい。
 学生のため、生徒のために、最高の環境をつくりたい。応援できることは、何でもしたい ── これが私の思いである。
 日本では予想を超える速さで少子化が進み、定員割れを起こす大学や学校が増えてきている。大学の合併や“倒産”が、現実のものとなっているのだ。
 教育界は「大闘争の時代」に入ったといえる。
 こうした厳しい状況のなかで、「何とかなるだろう」とか「うちは平気だ、心配ない」などと、呑気に構えるようなことがあってはならない。
 打つべき手を、ただちに打つのだ。
 驕(おご)りや油断があれば、簡単につぶれてしまう。敗北してしまう。それでは、あまりにも愚かだ。
 教職員が団結し、智慧を出し合い、必死になって戦っていくしかない。
 何よりも、今いる生徒たちを徹して大切にすることだ。
 生徒の持つ才能を育て、開花させていく。何かで一番になるよう、光を当てていく。
 そして、本当の人生の道を教えていく。ここに教員の使命がある。
 戸田先生は語っておられた。
 「生徒を良くするということは、先生の愛情の問題だ。生徒を、わが子以上に愛し、大事にしていくことだ」
 生徒のことを真剣に祈り、生徒のために尽くしていく。これが根本である。格好ではない。本当の「心」があるかどうかだ。
 「私の学校に来てくれてありがとう」と感謝し、親身に面倒を見ていく。「私が教えた生徒だ」と一生涯、その生徒を見守っていく。
 これが真の教育者である。
 そしてまた、生徒のご父母を大切にしていくことだ。「わが校にお子さんを送り出してくださって、ありがとうございます」と感謝していく。
 直接、お会いして、「お子さんは、こんなふうに頑張っておられますよ」と報告し、安心していただく。
 教職員が動き、語っていった分だけ、大学・学園は発展する。
 動かなければ勝てない。これは万般に通じる鉄則である。

◆師の名を後世(こうせい)に
 一、牧口先生の『創価教育学体系』は、戸田先生の多大な尽力によって発刊された。
 戸田先生は後に、このことを振り返られて、「陰の力であった自分のことは、誰一人ほめもしなかったが、私は一人、会心の笑みを浮かべていた」と述懐しておられた。
 先生は、『創価教育学体系』の発刊によって、自分の名をあげようとか、ほめられようなどとは一切、考えられなかった。
 牧口先生の名を後世に残したい。師匠の思想を世に送り出したい ── その思いで、陰の支えに徹したのである。
 これが「弟子の道」である。

◆学生が立った
 一、1000年の歴史を誇る中国最古の学府・湖南(こなん)大学の王邦佐(おうほうさ)・政治公共管理学院院長は語っておられた。〈池田名誉会長は本年4月、同大学から名誉教授の称号を贈られている〉
 「どんな組織も腐敗は内側から起こるものです。じつは湖南大学も過去に学生を愚弄し大学を撹乱(かくらん)する学長が君臨したことがありました。
 そのときに学生たちが猛然と立ち上がり、学長を放逐(ほうちく)し創立の志を守り抜いたのです」(「パンプキン」7月号)
 重大な歴史の教訓である。だからこそ「学生の声を聞く」ことが大事なのである。
 また、フランスの文豪ロマン・ロランは綴っている。
 「私たちはあまりにも多くの否認、あまりにも多くの道徳的および精神的な裏切りを経験いたしました。それらを忘れることはゆるされません。(中略)昨日の変節漢はまた明日の変節漢でありましょう」(『日記V』道宗照夫訳、みすず書房。現代表記に改めた)
 「試練のときにあたって裏切者であり背信者である自己の正体を暴露した人たちが、再び私たちの列中に滑りこんできて、彼らの偽善的友好によって私たちを荼毒(とどく=害し毒する)ことを、私たちは許してはなりません」(『日記?』村上光彦訳、同)
 私利私欲のために、仲間を裏切る。そうした人間を絶対に許してはならない。悪人の本質を鋭く見抜き、それを責めなければ、善の連帯は破壊されてしまうからだ。

◆「もう一度、教師になりたい」
 一、中国の周恩来総理の夫人である訒頴超(とうえいちょう)女史とは、何度もお会いした。本当に素晴らしい方だった。
 若き日に教師として活躍された女史は、こう述べておられる。
 「教育は人間をつくる聖業です。もしも私が職業を選ぶとしたら、もう一度、教師を選ぶことでしょう」
 いい言葉だ。
 私も、もう一度、職業を選べるならば、教師になりたいと思う。未来を担う生徒を教えていく。こんなに張り合いのある仕事はない。
 生徒を手段にしたり、何かの道具と思うようなことがあれば、とんでもないことだ。未来の宝を教えることができて、本当にありがたい ── そう思って全力を尽くしていくべきである。

巌窟王(がんくつおう)のごとく
 一、さらに、戸田先生のご指導を紹介したい。
 私は先生のご指導は、すべて命に刻んでいる。後世のために、記録して残してきた。
 これが師弟である。
 私は先生と本当に一体であった。「師弟不二」であった。
 牧口先生は、軍国主義と戦って獄死なされた。同じく投獄された戸田先生は、まさしく巌窟王のごとく、一切を耐え抜かれた。そして師の仇討ちの、“平和への戦い”に、武者震いして立ち向かわれた。
 私は、戸田先生が事業で挫折し、膨大な負債を抱え、すべてが崩れそうになったときに、戸田先生を守り抜いた。
 戸田先生は、牧口先生の道を開いた。
 私は戸田先生の道を開いたのである。
 「師弟」「師弟」と口では、いくらでも言える。表面を取り繕い、ごまかすこともできる。
 しかし大切なのは、生命の奥底の一念だ。心の奥の奥が、どうなっているかだ。
 戦うしかない! ── この心の炎が燃えている人は“善”だ。
 反対に、苦労は人に押しつけ、自分だけいい子になるそれは“悪”であり、“敵”である。


◆◆ 教育の勝利から未来の勝利が!

◆教師から声を
 一、戸田先生は言われた。
 「生徒がつく教師と、つかない教師があり、子どもがよろこんでくるようになりなさい」
 そうなるよう努力していくことだ。
 生徒を心から励まし、「あの先生は素晴らしいな」と思われる存在になることだ。
 また戸田先生は、「教員は、年齢にかかわらず、学生以上にはつらつと! 学生以上に謙虚に!」と指導しておられた。
 教師のほうから、生き生きとあいさつし、どんどん声をかけていくことだ。
 さらに戸田先生は、ある教員に対して「技術の受け売りではダメだ。人間対人間が大事だ」とも語っておられた。
 いくら技術を誇っても、生徒が伸びなければ、教師の自己満足にすぎない。
 大事なのは、生徒と心を通わせていくことだ。そこに教育の真髄がある。

◆「女性の力」を伸ばす教育を
 一、スウェーデンの思想家で、近代婦人運動の先覚者として著名なエレン・ケイ。牧口先生も、注目しておられた人物である。
 彼女は、婦人たちが社会的扶助の分野において活動的であったことから、男性よりも戦争の愚かさを深く認識するようになった、と述べている(本間久雄訳『全訳 来るべき時代の為に』北文館刊から)。
 平和を愛し、人々を慈愛の光で包んでいく ── 女性には、そうした本然的(ほんねんてき)な力がある。
 女性がもっともっと活躍するようになれば、世界は大きく変わっていくに違いない。
 創価大学、女子短大、創価学園を卒業した多くの女性も、世界を舞台に活躍している。
 「女性の時代」である。女性の力を生かし、伸ばしていく。そうした教育にも、いっそう力を注いでまいりたい(大拍手)。

                   (〔下〕に続く)