創立記念日祝賀協議会〔中〕

指導者の真価は いかに苦難に勝利するか
心一つに新しい時代を
   叫び抜け! 「正義は正義」と
   慈悲と信義の人たれ 報恩こそ人生の肝要


【名誉会長のスピーチ】
 一、圧迫をはねのけ、大いなる自由を勝ち取ったアメリカ独立革命
 これをめぐって、第2代のアダムズ大統領は、第3代のジェファソン大統領への手紙
に書き記している。
 「アメリカ革命とは何を指すのでしょうか……革命は人々の心の中にありました」(明
石紀雄著『モンティチェロのジェファソン』ミネルヴァ書房
 すなわち、あの独立革命も、あくまでも、人々の心の革命の結果であったというの
だ。
 また、中国の近代民主革命の先駆者であった孫文も語った。
 「革命事業をなすには、どんなことから始めたらよろしいのか。
 それにはまず、自分の心の中からはじめ、自分がこれまでもっていた良くない思想・
習慣や性質、野獣性、罪悪性や一切の不仁不義(ふじん・ふぎ)な性質をすべて取り
除かなければなりません」(庄司荘一訳「陸軍軍官学校開校演説」、『孫文選集第2
巻』所収、社会思想社
 これまで人類の歴史が試行錯誤してきた「革命」の理想を、平和裏に、そして着実に
実現しているのが、創価の「人間革命」の大運動なのである。
 戸田先生は、よく言われた。
 「一切をよりよく変化させゆくのが、妙法の無限の力用である」
 また「学会の革命は、あらゆる部門にわたり、広さは随一である。そして、それは、
全民衆から盛り上がる力によって成し遂げられるのである」と語っておられた。
 そのうえで、先生は結論された。
 「大事なのはリーダーだ。リーダーで決まる。指導者が自分を変えるしかないのだ」
 組織が衰退するときも、まず“上”が腐敗するところから始まる ── これは、古今
東西の歴史が示してきた厳しき教訓といえよう。
 永遠の発展の道をつくるのは「今」である。
 皆が「広布の責任者」との自覚に立つことだ。
 皆が「師とともに」勇んで進むことだ。
 ここに学会の強さがある。
 どこまでも、「正義は正義」と叫び抜くのだ。
 そして自らが、慈愛あふれるリーダー、信義を貫くリーダーとなりゆくことである。
 もう一度、新しい決意に燃えて、心一つに、新しい時代を開いてまいりたい(大拍手)。

◆信心とは革命
 一、私が「戸田大学」で学んだ御書に「当体義抄(とうたいぎしょう)」がある。
 その一節に、こう仰せである。
 「所詮、妙法蓮華の当体とは、法華経を信ずる日蓮の弟子檀那等の、父母から生じ
た肉身そのものをいうのである。
 正直に方便の教えを捨て、ただ法華経を信じ、南無妙法蓮華経と唱える人は、煩
悩・業・苦の三道が、法身(ほっしん=仏が証得した真理)・般若(はんにゃ=真理を
悟る智慧)・解脱(げだつ=法身・般若の二徳が一如となり、生死の苦界から脱却した
状態)の三徳と転じて、三観(さんかん=三種の観法。観法とは法を観ずること)・三
諦(さんたい=仏が悟った究極の真理を三つの側面から捉えたもの)が、そのまま一
心にあらわれ、その人が住するところは常寂光土となるのである」(御書512ページ、
通解)
 まことに深遠(じんのん)にして重大な御聖訓である。
 まさしく、信心とは「革命」である。
 「命」を「革(あらた)める」 ── このわが身を、「仏」の生命に「革命」していくのであ
る。
 自分が今いる、わが家庭を、わが職場を、わが地域を、わが組織を、わが社会を、
そして、わが世界を、「寂光土(じゃっこうど)」へと革命していくことなのである。
 そのすべてが、自分自身の「心」の革命、「一念」の革命から始まる。そして、その革
命を成し遂げる究極の力が、「師弟不二」にあるのだ。

◆「師とともに」が最高の誇り
 一、師弟に生き抜く人生は、すがすがしい。
 生涯、戸田先生とともに! ── それが私の最高の誇りだ。先生のことを思えば、
限りない力がわいてくる。
 戸田先生の薫陶を受けた10年間は、私にとって100年分もの価値がある。いな、
それ以上の、かけがえのない宝の時間であった。
 決して順風満帆(じゅんぷうまんぱん)の青春ではなかった。4人の兄は兵役にとら
れ、一家の柱の父はリウマチ。私は家族を守りながら、死にものぐるいで戸田先生に
お仕えした。
 先生は自ら、万般(ばんぱん)にわたる学問を、私に打ち込んでくださった。「大作し
かいない」と、命をかけて育ててくださったのである。
 師の恩に報いる。ここに人間の道がある。
 仏法は「恩」を重視する。恩を知らないのは畜生である。報恩こそ、人生の肝心要
(かんじんかなめ)の精神にほかならない。そこに、生命の栄冠が輝きわたる。


◆◆ 永遠の城を築くのは今
    ── 〔青年〕を育てた所が勝つ

◆同じ情熱を!
 一、先日、200番目となる名誉学術称号を拝受した「北京師範大学」は、中国の教
育界の最高峰である。
 創立は1902年。実に104年の伝統と歴史を誇る。北京大学などとほぼ同時期に
誕生した、先駆の中の先駆の名門である。
 創立者は、中国の「大学の父」と敬われる大教育者の張百煕(ちょうひゃくき)先生で
ある。〈張百煕が1902年に創立した「京師(けいし)大学堂師範館」が、北京師範大
学の淵源〉
 当時、中国は、日本そして列強諸国に侵略され、蹂躙(じゅうりん)されていた。その
混乱の闇の只中で、張先生は決然と立ち上がった。
 社会を照らす希望の光明は、「教育」しかない!
 これからの時代は、「人材」を育てたところが勝つ! ── と。
 なかんずく、「教育は教師で決まる」というのが、この創立者の信念であった。
 ゆえに、創立者は叫んだ。
 「良き教師を集めるためには、慣例や慣習に囚(とら)われてはならない」
 「教師は、品性と学問を併せ持った、徳望のある存在でなければならない」
 だからこそ、創立者は、国中をかき分けるように、懸命に人材を探した。
 優秀な教育者がいると聞けば、自ら出向いて、まさに「三顧の礼(さんこのれい)」を
尽くして迎え入れた。その真剣な熱意に、多くの高名な教育者が続々と集ってきた。
 そして、創立者の大誠実に、教授陣も大誠実で応えたのである。
 本年、創価大学創価学園に来学されたタイ王国の国立メージョー大学のテープ学
長も語っておられた。
 「教育の成功の鍵は、創立者と同じ情熱を教師自身がもてるかだと思います」
 〈国立メージョー大学からは、池田名誉会長に「名誉管理学博士号」が贈られてい
る〉

◆「創立の精神を探求し続ける」
 一、今、日本の教育界において、大学への評価がさまざまに行われている。
 その中でも、「創立の精神」「建学の精神」の重要性が再認識されていることは、ご
存じの通りだ。
 思えば、私が2度、講演させていただいた、世界最高峰のハーバード大学も、「創立
の精神」を大切にしていた。
 私に最初に、ハーバード大学への招聘状(しょうへいじょう)をくださったのは、世界
的な政治学者ジョセブ・ナイ教授であった。
 私はナイ教授に、こう質問したことがある。
 ハーバード大学が、第一級のリーダーを陸続と輩出している理由はどこにあるのか
── と。
 ナイ教授は、明確に、答えておられた。
 「まず申し上げるべきは、伝統の力でしょう。
 “真理の追究”と“公共の利益に資(し)する” ── これがハーバード大学の精神で
すが、私たちは長い間この信念を守り抜いてきましたし、今もなお伝統の実現のため
に努力しています。ここに人が育つ背景があると思います」
 ハーバード大学の創設が、マサチューセッッ湾植民地の総会で議決されたのは、3
70年前(1636年)の10月28日。あのメイフラワー号のアメリカ到着から、わずか1
6年後のことである。
 大学の創立には、「学問の光」で社会を照らすという「開拓の父母」たちの願いが託
されていた。
 この点、ナイ教授は、こう語っておられた。
 「たとえ小さく原初的(げんしょてき)であっても、草創期のハーバード大学は、すでに
『学問の重要性』を体現していました。『精神』は偉大でした。
 大きく発展した今も、その創立の精神は生きています。どう生かすかと探求し続けて
います」
 〈ハーバード大学の学識者からも、池田名誉会長の「200」の名誉学術称号受章に
対し、祝福の声が寄せられている〉

◆前進するから困難がある
 一、さて、周恩来総理は、1963年の7月、北京師範大学等を卒業する学生の代表
人民大会堂に招き、多忙ななか、深夜まで5時間にわたって懇談を行った。
 それほど、周総理は、学生を大事にしていた。人材の育成に全魂を注いでおられ
た。
 総理は、学生たちを、こう励まされた。
 「その国の真の姿は、何で決まるか。
 それは、いかなる困難を抱えているかではない。それらの困難に対して、指導者が
どう立ち向かっていくかで決まる。
 今、我々は、多くの困難を抱えている。しかし、我々は、それを断固として打ち破って
いくのだ」と。
 組織であれ、個人であれ、常に困難はある。それは、むしろ前進している証拠なの
だ。
 すべての試練が、何ものにも負けない自分自身を鍛え、何ものにも崩れぬ自分たち
の「城」を築き上げていくのである(大拍手)。

             (〔下〕に続く)