埼玉池田研修道場での名誉会長のスピーチ(下)



 民衆と共に!民衆の声を聞け!ハベル大統領                                    皆に愛される指導者に
 一、この5月の3日「創価学会の日」を、アレキサンダー大王との縁も深き、欧州マケドニアの最高峰の知性の方々も祝福してくださった。「オホリッド・ヒューマニズム・アカデミー」の一行である。
 光栄にも、マケドニアのグルエフスキ首相からは、丁重な招聘をいただいている。
 今回、来日された同アカデミーのプレヴネス会長は、若き日、ロンドンの書店で、歴史学者のトインビー博士と私との対談集を、たまたま手にされた。
 そして対談集を読み、深い感銘を受けたことが、SGI(創価学会インタナショナル)の存在を知った最初であったと述べておられた。
 『生命を語る』のマケドニア語版が出版された際には、著名な小説家でもあられるプレヴネス会長が、まことに格調高い序文を寄せてくださった。
 〈マケドニア語版の『生命を語る』は、出版以来、各界で大きな反響を呼び、ベストセラーとなっている〉
 
創価の対話運動は歴史つくる力 
 一、会長は、その序文のなかで、私たちが進めてきた対話の運動に、世界の歴史をつくり変えていく力があると讃えてくださっている。
 〈プレヴネス会長は序文で、現代世界において世界平和に貢献した人物として、「池田氏に比肩し得る人物は、まず見当たらない」と述べる。
 さらに「(池田氏と世界の数多くの指導者たちとの会談は)現代のすべての人々にとって参考になる重要な出来事であり、これを知らずして現今の世界史の再構築は考えられない」と評価している〉
 2300年前、アレキサンダー大王が人類融合ヘの扉を開いたごとく、私たちの行動が、壮大なる人類史の新たな扉を開きゆくことを、大王ゆかりの地の知性が期待し、信頼してくださっているのだ。
 師弟不二で立て 
 一、アレキサンダー大王は「いかなる急場にもみずから艱難辛苦を引き受けて味方を励まし助けることを常としていた」という(鶴見祐輔訳『プルターク英雄伝6』潮文庫)。
 ここに、指導者の要諦があるといえよう。
 一、若き日、私は弟子として、師匠である戸田先生に徹して仕えた。
 戸田先生の事業は破綻し、膨大な負債を抱えた。先生は学会の理事長を辞任。明月をも知れないという、絶体絶命の状況だった。
 多くの人間が先生のもとを去っていくなかで、私がただ一人、先生を守り抜いた。
 厳しい闘争のなかで、真夜中に戸田先生から呼び出されたこともあった。私は、飛ぶようにして駆けつけた。
 師匠を守る。師匠のために、わが身を捨てて戦う。そうしてつくりあげたのが、今の創価学会である。
 私は、働いて働いて、働き抜いた。戸田先生の借金も、すべて返した。折伏でも、どんな拡大の戦いでも、すべて最高の結果を残し、広宣流布の道を切り開いてきた。
 牧口先生、戸田先生は、軍国主義と戦って牢獄まで行かれた。
 私も、無実の罪で牢獄へ行った。想像を絶するほどの迫害と中傷を受けてきた。ありとあらゆる悪口(あっこう)を浴びてきた。
 牧口先生、戸田先生の後を継ぎ、私が一人、すべての矢面に立って戦ってきた。
 一切をなげうって、学会を守り、尊き同志を守り抜いてきた。そして、ここまで学会を発展させたのである。
 御聖訓には、こう仰せである。
 「良い弟子をもつならば、師弟は、ともに成仏し、悪い弟子をたくわえるならば、師弟は、ともに地獄に堕ちるといわれている。師匠と弟子の心が違えば、何事も成し遂げることはできない」(御書900ページ、通解)
 仏法の根本は「師弟」だ。真実の弟子であるならば、師匠のために体を張ってでも戦うのだ。師の勝利を祈り抜いていくのだ。
 それを、敵に対して本気になって戦わない。見て見ないふりをする。そんな情けない弟子、ずるい人間であっては絶対にならない。
 大きく心を開いて、本当の高次元な創価学会の精神に立って戦うことだ。「師弟不二」で戦いきることだ。
 「師弟」がなくなったら、学会は壌されてしまう。
 幹部が先頭を切って、師匠の正義を訴える。師の真実を、日本中に叫び抜いていく。そういう埼玉をつくってもらいたい。 師弟直結の大埼玉を、皆さんの力で断じて築いてもらいたい。
フランスの思想家 大変なときこそ大胆不敵であれ
 悪を打ち破れ 
 一、戸田先生は恩知らずに対しては、それはそは厳しかった。こう指導しておられた。
 「ひたすら現在の世相を見るに、人の道たる知恩・報恩の者が、ごく稀である。ここに、社会の乱れが生ずるのである」
 「恩を報ぜぬということは人間の特権を放棄し、禽獣に同ずることである」
 そして先生は、学会の大恩を踏みにじり、和合僧に弓を引く人間とは、徹底して戦えと厳命されたのである。
 これまでも、学会のおかげで社会的な地位を得ながら、傲慢になり、ついには反逆していった人間がいた。
 ゲーテは述べている。
 「愚昧な、狭量の連中こそ、だれよりも威張りたがる」(生野幸吉訳「西東詩集」、『ゲーテ全集2』所収、潮出版社
 愚かな人間に限って、すぐに威張り散らし、人を見下すものだ。こうした人間を絶対に許してはならない。
 イタリア・ルネサンスの大詩人アリオストは叙事詩で綴った。
 「ああ、哀れなるかな、邪悪な輩に長きに渡り、唆(そそのか)されて、苦しみに引きずり込まれる者たちよ」(脇功訳『狂えるオルランド(上)』名古屋大学出版会)
 悪は放置すれば増長する。皆、だまされてしまう。悪人と戦わなければ、学会が破墳されてしまうのだ。
 「破邪顕正」といっても、あくまで「破邪」が先である。まず悪と戦い、悪を打ち破るのだ。
 それでこそ「顕正」がある。悪を倒してこそ、初めて正義を明らかにし、宣揚することができるのである。
 「破邪」が根本であり、その次が「顕正」だ。この方程式を、深く胸に刻んでいただきたい。 戸田先生は、こうも言われていた。
 「忘恩反逆の提婆達多は、一切の悪人を集めても、釈尊の仏法には敵わないという証拠を残して、仏罰を受けて死んだ」
 日蓮大聖人の正統である創価学会に仇をなした、提婆のごとき輩が、哀れな末路をたどっていることは、皆様がご存じの通りだ。
 「正義の埼玉創価学会は、すべてに勝った!」と申し上げたい(大拍手)。
戸田先生 忘恩から社会の乱れが生ずる
破邪顕正が仏法の魂
リーダーが先頭に立って叫び抜け
 困難は事業の基礎を強固にする 
 「今、私が対談を進めている中国の大歴史学者・章開玩(しょうかいげん)先生は、埼玉出身で、近代日本を代表する実業家の渋沢栄一(しぶさわえいいち)氏を高く評価し、研究を深めておられる。
 中国の文明に深い敬愛を抱いていた渋沢氏が、中国との交流を積極的に進めていたことも、よく知られる。
 この渋沢氏の有名な言葉に、「社会からよき待遇を受ければ、それだけ、己れの責任を自覚しなければならない。
 その責任をつくさなければ、名誉はかえって不名誉となり、尊敬はかえって軽蔑を受くるのもととなる」とある(渋沢青淵記念財団竜門社編『渋沢栄一訓言集』国書刊行会)。
 また、渋沢氏は語っている。
 「世の中の事はすべて心の持ちよう一つでどうにでもなる」(同)
 「人は消極的に悪事をなさぬというだけでは、物足らないのである。積極的に多く善事をなさねば、人たる価値はない」(同)
 いずれも、大事業を成した人物ならではの、重みのある言葉だ。
 さらに彼は、「困難の時には、かえって事業の基礎を強固にし、得意の時には、多く腐敗の因を醸すものである」(同)と戒めていた。
 これは歴史の鉄則だ。リーダーは、絶対に油断禁物である。
 「足元から努力していくのです」 
 一、この研修道場の近辺には、「高麗(こま)川」の清流が流れる。
 「高麗」という名前には、奈良時代高句麗から多くの渡来人が移住し、優れた文化を伝えてくれた歴史が留められている。
 「文化大恩」の国である、お隣の韓国でも、わが同志が最高に晴れ晴れと「5月3日」を祝賀してくださった。
 〈韓国を代表する言論団体である「韓国雑誌協会」からは、5・3「創価学会の日」を記念して名誉会長夫妻に「特別顕彰牌」が贈られた。また先月、韓国SGI初の墓地公園となる「平和公園」が開園した〉
 今年の3月、創価学園の卒業式には、韓国最大の芸術の大城である「韓国芸術文化団体総連合会」の李城林(イーソンリム)会長をお迎えすることができた。
 李会長は、師匠を最大に大切にされ、報恩の人生を貫いてこられた。韓国伝統の「国楽」の女性歌手、また舞踊家としても大変に著名である。
 この李会長は語っておられる。
 「本当の勝利、それは、自分自身との戦いに勝った人にこそ、訪れる」と。
 まことにその通りである。
 学会も常に、全国、全世界を晴れ舞台にして、婦人部、女子部の清々しい勝利から、勝利また勝利の勢いが加速している。
 また、18世紀から19世紀にかけて生きた女性詩人で、書画家でもあった姜静一堂(カンジョンイルダン)は述べている。
 「先ばかり求めていては、徒労に終わってしまいます。まずは、足元から努力していくのです」
 万般に通じる道理だ。千里の道も一歩からである。その一歩また一歩を、着実に、誠実に積み重ねていく人生が、最後は必ず勝つのだ。
 闘争精神を受け継げ! 
 一、次に、青年部に贈りたい。韓民族の独立の指導者・呂運亨(ヨウニョン)の叫びである。
 「倒れてもまた起き上がって闘う闘争精神は、青年が受け継がなければならない精神である」
 うれしいことに、不撓不屈の学会精神を厳然と受け継ぐ、わが埼玉青年部の活躍も、まことに目覚ましい。
 呂運亨は、厳しく戒めてもいる。
 「有利な時には正義を口にし、不利な時に裏切るとはとんでもない」
 大聖人の滅後、日興上人の時代には、五老僧がいた。彼らは高弟でありながら、肝心な時に、愚かにも権力を恐れ、権威におもねった。そして、師が打ち立てた正法を歪め、踏みにじった。
 次元は異なるが、牧口先生、戸田先生の時代も、卑劣な背反者が出た。
 ゆえに、戸田先生は晩年、繰り返し、"第3代を中心に団結せよ"と語ってくださっていた。
 「第3代は、第2代よりも、もっと大きな仕事をするよ。いいかい。みんなで、第3代を大事にするんだぞ!」と。
 これは当時の最高幹部がよく知っていることである。
 この戸田先生の遺言のままに、第3代の推戴に、真っ先に立ち上がり、声を上げたのが、埼玉青年部であった。
 忍耐で勝て! 執念で勝て! 
 一、民族独立の闘士として戦った大詩人・韓龍雲(ハンニョンウン)は「私が望む青年とは、持久力のある青年である」と綴っている。
 青年よ、忍耐で勝て! 執念で勝て! というのである。
 20世紀の作家・沈熏(シムフン)は強調した。
 「みんなが一つの心、一つの志で、その力を一カ所に集めさえすれば、どんなことでも成し遂げることができる」と。
 団結は美しい。団結は楽しい。そして団結こそ力だ。
 「異体同心」こそ、絶対勝利の法則である。「鉄桶の埼玉」の団結は、今や世界中に轟いている。「異体同心なればか(勝)ちぬ」である(御書1463ページ)。
 「鉄桶の埼玉」が勝ち抜いていくことが、仏法の御聖訓の証明なのである。
 原点を忘れるな 
 一、東欧チェコの大統領を務めたハベル氏は、その就任演説で述べている。
 「常に同胞の国民とともにあり、国民の声に熱心に目を傾ける大統領になりたい」(井上一馬編著『後世に伝える言葉』小学館
 ハベル氏は、チェコ民主化を実現した「ビロード革命」の立役者であった。大統領として来日したハベル氏と、東京の迎賓館で語り合ったことが懐かしい。〈1992年4月〉
 民衆と共に!
 民衆のために!
 この原点を忘れてしまえば、もはや指導者の資格はない。
 リーダーは、皆の意見をよく聞いていただきたい。そして、皆から好かれる存在であってもらいたい。
 人の心がわからない。わがまま。そんな人間が指導者だったら、皆、どれほど嫌な思いをすることか。

│周総理│ 青年よ人民の中で戦え!学べ!
 道理に合わないことで叱られ、文句を言われる──それでは、何のための組織かわからない。
 皆さんは、本当の人間性が輝く、慈愛のリーダーであってもらいたい。そして、異体同心で進んでいただきたい。
 ナチスと戦った、イギリスの首相チャーチルは言った。
 「問題は不屈の忍耐をもってすれば解決されるものと確信しています」(毎日新聞社翻訳委員会訳『第二次大戦回顧録19』毎日新聞社
 「何はともあれ、勝利を勝ち取らねばならない。勝利こそ、われわれの成し遂げるべきことである」
 この決心で戦い切ることだ。
 また、フランスの思想家ヴォーヴナルグは述べている。
 「勇気の極限は、危難にあって大胆不敵であることである」(内藤濯訳『省察箴言創元社
 大変な戦いの時こそ、勇気を出して、大胆に行動するのだ。
 はつらつと! 理想を胸に! 
 「今月の5日、私は中国・天津社会科学院の先生方を創価大学にお迎えした。
 天津は首都・北京から近く、「北方経済の中心」として発展を続ける都市である。
 一行は、天津が、周恩来総理が立ち上がった革命の原点の地であり、北京と一体となって、中国の発展の原動力となっていることを、大きな誇りとしておられた。
 また、明年の北京オリンピックの最初の競技も、天津から始まる予定とうかがった。
 今、埼玉も、首都・東京に隣接する都市圏として、その存在に大きな注目が集まっている。
 わが埼玉は、広布発展の原動力である。創価学会の前進にとって、そしてまた、日本全体の前進にとって、どれはど大事な天地であるか。
 埼玉の勝利が、全首都圏の勝利であり、全学会の勝利である。
 その埼玉の誉れの同志に、周総理が天津の青年たちに語った言葉を、贈りたい。
 「青年は、困難を恐れてはならない。より多くの困難に挑み、それらを克服する力を培っていくべきである」
 「間違ったことには」勇気をもって対峙(たいじ)し、厳然と正していきたまえ」
 さらにまた、周総理は訴えた。
 「人間は理想を持たねばならない。理想なき生活は、進むべき道が見えなくなる。
 人民の中に入って、戦って、学んでいくことだ。そこにこそ、人生の意義がある」
 若き日、天津で活躍した●穎超(とうえいちょう)夫人が、友人に贈った詩には、こう認められている。
 「あなたよ!
 煩悶や苦悩の魔を、毅然と打ち払うのだ。
 はつらつとして、努力し奮起するのだ。
 私は信ずる。
 これから、あなたが必ずや、日に日に進歩し続けることを!
 そのあなたの姿を、私は何よりの喜びとする。 あなたの前途に祝福あれ!」
 青年部の皆さんが、すべての先頭に立って、勝利への道を切り開いていただきたい。
 止まることなく堂々と進め! 
 一、最後に、敬愛する埼玉の皆様に和歌を贈りたい。
 素晴らしき
  広布の大王
   埼玉と
  蓮祖の誓約
   嬉しく果たさむ
 偉大なる
  わが埼玉は
   広宣の
  堂々進まむ
   止まることなく
 鉄桶の
  全埼玉の
   団結は
  楽しく幸福あれ
    仏のスクラム
 威風も堂々と、勇気と希望の大前進を! 「賢者のスクラム」が即「仏のスクラム」である。
 偉大なる常勝埼玉、万歳! どうか、お元気で! 埼玉の全同志の皆様にくれぐれも、よろしくお伝えください。
 きょうは、本当にありがとう! また、お会いしましょう!(大拍手)
 (2007・5・8)