全国最高協議会(3)



一人立てば万人に波動

心理学の綱引きの実験 人に頼ると力が出ない

トインビー博士 "自分は小さな存在"と思うな

一、未来のための連日の協議、本当にご苦労さま!

 後継の友に伝えるべき、一番、大事なことは何か。

 それは、崇高なる師弟の魂である。

 創価の師弟の誉れの歴史である。

 古今東西、正義の人は、正義なるがゆえに迫害されてきた。

 だからこそ、「正義が勝つ時代」を開かねばならない。

 迫害の構図を鋭く見抜くのだ。そこに渦巻くのは嫉妬であり、慢心であり、私利私欲である。

 昭和54年(1979年)の第1次宗門事件も、そうだ。堕落した坊主と、忘恩の反逆者が結託して、正義の学会を乗っ取ろうとした。

 どれだけ卑劣であり、陰険であったか。

 しかし、私は微動だにしなかった。

 ──私は師子だ! 戸田先生の弟子だ!

 師匠を信ずるということは、師匠の言う通りに実践することだ。

 師弟に生き抜けば、恐れるものなど、何もない。

 御聖訓には「大難来りなば強盛の信心弥弥悦びをなすべし」(御書1448ページ)と仰せである。

 私は訴えたい。

 後継の君たちよ!

 人ではない。自分だ。富士のごとき、不動の自分をつくるのだ。

 いかなる嵐があろうとも、師子として叫べ!師子として戦え!

 永遠に勝利の道を開きゆけ!(大拍手)

 この世で最も誠実な関係

 一、現在、私は中国の著名な歴史学着で、「史学大師(しがくだいし)」と仰がれる章開●(しょうかいげん)先生(華中師範大学元学長)と対談を進めている。

 章先生の座右の銘の一つは、「薪火相伝(しんかそうでん)」という言葉である。中国の古典『荘子』に由来する言葉で、「薪は自らを燃やすことによって火を伝えていく」という意義である。

 この言葉に触れ、章先生は、次のように語ってくださっている。

 「創価学会において、牧口先生から戸田先生へ、戸田先生から池田先生へと、三代の会長に平和の信念が厳然と受け継がれてきたことは、まさに『薪火相伝』と呼ぶにふさわしい壮挙であります」

 深いご理解に、心から感謝申し上げたい。

 章先生は、「師弟の精神」をこよなく大切にされている。対談の中でも、次のように繰り返し語っておられる。

 「人間を育てる教育にとって最も尊ぶべきは、師弟の間における思想の交流です」

 「師匠と弟子、教師と学生の関係は、この世で最も純潔にして、最も誠実かつ高尚な関係です」

 章先生の言われる通りだ。

 師弟が根本である。この精神が崩れれば、団体も、個人も、衰亡していく。反対に、師弟の精神ある限り、どこまでも発展し、成長していける。

 師弟の魂を失った者は、すでに心が死んでいるのである。

 「最も哀れなのは心の死である」との警句を章先生は綴っている。

 形式ではない。格好ではない。「心がどうか」なのである。

 激動の時代を勝ち抜くには

 一、激動の時代の中で勝ち抜いていくための要件は何か。

 もちろん、さまざまに分析できるが、ポイントの一つは、「人に頼る心を捨てる」ことではないだろうか。

 運動会の伝統の競技「綱引き」に関連した興味深い実験がある。

 一人で綱を引く場合と、大勢で綱を引く場合とでは、力の出し方が、どう違っていくかを調べたものである。

 綱を引く人数が増えればどうなるか。結果は、人数が増えれば増えるほど、一人一人が出す力は減っていく。

 一人の時に出す力を「100」とすると、8人で綱を引く場合には、一人が出す力は「50」以下になってしまうというのである。

 共同作業をする人数が増えると、「一人」の出す力が減っていく。こうした現象を心理学用語で「社会的手抜き」と言う。実験をした人の名前にちなみ、「リンゲルマン効果」とも呼ばれる。

 “人に頼る心”がある限り、自分のもっている大きな力を出し切ることはできない。

 力を出し切ってこそ、厳しい現実に勝つことができる。

 

 学園での思い出 

 一、「綱引き」といえば、関西創価学園の健康祭(体育大会)を懐かしく思い出す。

 17年前の平成2年(1990年)10月のことであった。

 私が学園に到着し、グラウンドに入ったとき、ちょうど綱引きが始まろうとしていた。

 私はすぐさま、子どもたちのもとへ行き、一人一人を激励した。

 綱の最後尾まで、一人一人に声をかけて歩いた。そして、大熱戦に声援を送った。皆のきらきらした笑顔が、ひときわ印象的だった。

 この綱引きに参加していた児童は、今、公認会計士や、パイロット、母校の教員、さらに、新幹線の女性車掌など、各界に雄飛している。

 創価の青年リーダーとしても、多くの友が活躍している。

 これほど、うれしいことはない。

わが人生の総仕上げを 若々しく青年の心で

 目の前の人に励ましを 

一、イギリスの大歴史家トインビー博士は述べている。

 「勝敗の定っていない闘争においては、これに加わる一人々々が重要である。自分がすることあるいはしないことの結果はあまりにも小さいので目立った違いは生じないであろうという弁解のもとに、全力を尽くしておのが役割を演じることを免れる権利は、なんぴとにもないのである」(山口光朔・増田英夫訳『回想録1』社会思想社

 「一人」が大事である。

 本物の「一人」が立てば、「万人」の勝利と幸福につながる。

 人数が多いかどうかではない。一人でも、二人でも、真剣な人がいれば、全体に大きな波動を起こすことができるのだ。

 リーダーは、目の前の「一人」、自分が縁した「一人」を、全力で励まし、伸ばしゆくことだ。

 ほしいのは「人材」だけ 

 一、今や学会は、平和を築く、世界一の民衆の連帯をつくり上げた。

 私は、何も、ほしくない。ほしいのは「人材」だけである。

 力あるリーダーが必要だ。リーダーが愚かであれば、インチキな悪人にたぶらかされる。怖いことである。

 これまでも、学会のおかげで偉くなりながら、社会的地位や権勢に目がくらみ、堕落し、反逆していった悪らつな人間たちがいた。

 彼らは皆、“自分は手を抜いて、楽をして、苦労は全部、人に押しっける”──こういう卑しい心根であった。

 その本性は、思うように他者を支配し、従わせようとする「権力の魔性」にほかならない。

 同志を苦しめる"地獄の使い"だ。広宣流布を妨げる"魔物"の存在である。

 そうした「一凶」の心を、徹して断ち切っていかねばならない。

 人間革命の哲学 

 一、先輩は、模範を示すことだ。人生は仕上げが大事である。途中で手を抜き、退転してしまえば、結局、後悔と苦しみの人生となってしまう。

 もう一度、若返って、青年とともに、青年の心で進むのだ。

 先輩が旧態依然とした姿では、青年部が伸びない。女子部がかわいそうだ。

 私は、これまで、いかなる戦いにおいても、全身全霊を捧げて戦ってきた。手抜きをしたことなど、一度たりともない。

 だからこそ、勝利の歴史を開いてくることができたのである。

 ともあれ、一人一人が、自分の力を思う存分に発揮する。皆が、自分らしく、最大限に光り輝いていく。それが、創価の世界である。

 勤行・唱題はもちろん、教学の研鑽、座談会、友との対話など、学会の活動は、「一人一を変革しゆく、尊き挑戦である。

 私たちは、一人が無限の力を発揮しゆく「人間革命」の哲学を掲げ、堂々と進んでまいりたい(大拍手)。

 (2007・8・7)